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2014年04月22日

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ

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 どうも、運動不足sacomです。
 懸案事項だった環境影響評価書のジュゴン関連ページも読み進め、沖縄本島近海のジュゴンの実態がわかってきましたので、そろそろまとめてみようと思います。
 先に判ったことと疑問等を書いてみます。



なお、参考文献の主なものは以下のとおりです。
沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ

●沖縄県文化環境部環境保護課「ジュゴンのはなし」
http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizenryokuka/hogo...
●環境省:ジュゴンと藻場の広域調査 平成13年度~17年度 結果概要
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8978&hou_...
●防衛省:環境影響評価書
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/hyoukasyo/hyoukasyo.html
●ジュゴンネットワーク沖縄 沖縄近海におけるジュゴンストランディング(座礁混獲)記録 ※上記各調査に掲載されている
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【わかったこと】
★明治以降、沖縄本島中南部の各海岸、奄美大島~八重山の各地でジュゴンが捕獲された記録がある。かつては 奄美大島を北限として各地の海岸で見られていたと考えられている。(環境省:ジュゴンと藻場の広域調査)

★ジュゴンが激減した理由は、漁業対象として乱獲されたことと、一時保護政策が採られたが戦後の食料難により密漁が行われたことと考えられている。
(環境省:ジュゴンと藻場の広域調査)


★1979年代以降記録されているジュゴンの死亡原因で、最も多い理由は魚網に絡まる事故であり窒息死である。
(沖縄近海におけるジュゴンストランディング(座礁混獲)記録 ジュゴンネットワーク沖縄)

★現時点での沖縄本島近海のジュゴンは、最小個体3頭(もっとも少ないと考えた場合の個体数は3頭しか住んでいない)。2004年までは最小個体5頭が確認されており、2005年以降2頭が見られなくなった。
(環境省:ジュゴンと藻場の広域調査)

★1979~2004年の間、ジュゴンの死亡・混獲記録(年1回ペースで発生)があるが、2005年以降の記録がない(上記2頭減の記録が不明)。
(沖縄近海におけるジュゴンストランディング(座礁混獲)記録 ジュゴンネットワーク沖縄)

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


★確認されている3頭の主な生息場所は辺野古ではなく、沖縄本島の西海岸の古宇利島周辺、大浦湾北側の嘉陽海岸である。
(環境省:ジュゴンと藻場の広域調査及び防衛省:環境影響評価)

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


★確認されている3頭のジュゴン(個体A,B,C)のうち、個体Aはオスでウミガメと行動している様子が観察され、嘉陽海岸のリーフ周辺からほとんど移動しない。
(防衛省:環境影響評価)


★個体B,Cは親子でCは特に広い行動を取っており、古宇利島沖から国頭村東側まで移動、個体Cは嘉陽海岸周辺で主に見られるようになった。辺野古に出現する食み跡も個体Cによると考えられている。
(防衛省:環境影響評価)

★2005年以降確認されなくなった個体(仮称D,E)は金武湾から辺野古までの広い海域を回遊していることが確認されていた。
(環境省:ジュゴンと藻場の広域調査)

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


【疑問・考察】
★沖縄県文化環境部環境保護課「ジュゴンのはなし」に掲載されている「沖縄本島周辺の海草藻場の分布図」について、図面の元となった環境省調査と比較するとアマモ場の位置のズレがある。
 また、「沖縄本島周辺におけるジュゴン目視地点と食跡の分布図」の羅網漂着個体の表示について、元資料の環境省調査のものと色が違う。(意図的に修正してないか?)

★沖縄県文化環境部環境保全課「ジュゴンのはなし」は環境省調査をもとにして作成された広報用パンフレットであるが、重要な情報である最小個体(平成17年:2005年以降3頭)について記述がないのはなぜか。

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ

★ジュゴンは20頭いて1頭増えるかどうかという繁殖力の小さな生き物のため、3頭しか残っていない沖縄本島近海のジュゴンは何の対策もしなければ絶滅する可能性がきわめて高いと考えられる。

★本来の生息地ではない辺野古に限定したジュゴン保護活動は、適切かつ効果的とな行動とは考えにくい。ジュゴン保護は辺野古ではなく、主な生息海域である古宇利島、嘉陽海岸でするべきではないか。

★報道等を見て「なんとなくジュゴンが可愛そうだ・・・辺野古埋め立て反対!」と主張するだけでは、絶対にジュゴンは守れない。主な生息地は辺野古ではないためである

★「辺野古にジュゴンがいる」または「環境省や防衛省の調査は信用ならない」と主張する立場もあると思うが、ではなぜ並行して客観的な調査を行わなかったのか?辺野古がジュゴンの主な生息地ではないことを環境省等の資料を通じて知っているため、調査のしようがなかったのではないか。
埋め立てにより、多くのアマモ場が消失している。大規模な埋め立ては航路土砂を利用した商業目的、レジャー目的のものだが、ほとんどの埋め立てについて多くの県民は無関心という状況。
 


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 防衛省沖縄防衛局が調査・作成した「環境影響評価書」については、ジュゴンのページのみとはいえ実際に読み解いていく作業は大変ではありましたが、環境省調査から追跡調査を行い、埋め立てにおいてどのような影響があるか、また、どのような対策をすべきかなどが示されています。

 他の調査・資料とダブっている部分もありますが、確認されている3頭のジュゴンの見分け方であるとか、それぞれの行動パターン、航空機からの目視調査でヘリが高度150mまで降下しても、ジュゴンが逃げたりしなかったなど、興味深い内容が掲載されています。
 (2014041901.jpg:防衛省環境影響評価書より、個体A,B,Cの見分け方を図化)

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


 また、こうした調査では当然の流れかもしれませんが
●資料調査・聞き取り調査
●現地調査
●考察・検討

 という流れで進められているので、資料調査の段階で同じ出展元が出てくる場合があります。たとえば、2004年の記録を最後とした「沖縄近海におけるジュゴンストランディング(座礁・混獲)記録」は、沖縄県「ジュゴンのはなし」、環境省調査、防衛省の環境影響評価書ともに出てきます。
 最近資料の引用がどうこうという話題がありますが、このような調査研究の業界では、資料を引用するのはごく当たり前のことでしょうし、資料をもとに補填的に調査検討をしたり、不足している部分や疑義のある部分についてはあらためて調査・検討して進めていくのでしょう。

 環境影響評価書の本文に目を通してみたところ感じたのは、沖縄県「ジュゴンのはなし」と環境影響評価書の要約書を見てもらえれば、一般の方には沖縄のジュゴンの状況は概ね理解できるのではないかと思います。最後の3頭と考えられている「個体A,B,C」の行動パターンについて、かなり調べられているという印象でした。

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


 【個体A(オス)】
 嘉陽のリーフにほとんど留まっている個体Aが、リーフのスリット(浅いリーフから外海に続く深み。方言で航路を指す”クチ”と呼ばれている)を移動する様子が定点カメラで撮影されていたり、ウミガメと一緒に行動している様子が観察されています。個体Aがオスであること、なぜウミガメと一緒に行動しているのかもわかると思います。

【個体B,C(母子?)】
 また、親子関係にあると考えられている個体B,Cが国頭海岸まで移動し、その後個体Cが親離れしたと思われる行動を見せていることなども興味深いです。嘉陽海岸を縄張りとしている個体Aと違い、かなりの距離を移動していることがわかります。
 行動範囲が広く、時折辺野古のアマモ場を利用していると考えられている個体Cは、埋め立てにおいてもっともかかわりのあるジュゴンと考えられますが、埋め立てが進み、辺野古に関するアマモ場の一部が消失したとしても、辺野古に隣接する宜野座の広大なアマモ場や、金武湾以南にあるアマモ場に移動することは予測しやすいと思います。
 金武湾まわりで見られた2頭のジュゴンは2005年以降確認できなくなっていますから、縄張り争いすることもないでしょう。(そのかわり、仲間はもういませんが・・・)



 そこで思い出したことがあります。これは私が糸満で釣り船を運営していた頃のことです。ちょうど那覇空港第二滑走路の埋め立て工事が行われる、豊見城市瀬長の漁港から続く航路で、「クチ」と呼ばれる地形のあたりで釣りをしていました。
 日時は忘れてしまいましたが、太陽が西に傾いていて、偏光サングラス越しでも地形の判読が難しい時間帯でした。エンジンを切ったまま船を漂泊させながら釣りをしているため、座礁しないように海面の変化、特に暗礁に目を凝らしていました。

沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ
沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


 海に丸いものが浮いています。距離は約30m。最初はウミガメかと思いました。ウミガメは出航するたびに見かけるので、特に珍しい生き物ではありません。しかし、異常にでかい。人の頭の1.5倍くらいあるのです。その頭はひょこっと海中に沈んでしまいました。
 その瞬間、私は幽霊を見たのかと思いました。大型になるオサガメだったんだと自分なりに解釈していましたが、今考えてみると、あの頭はジュゴンだったのかもしれません。沖縄のジュゴンは、昼間は沖合いにいて、西日が時間帯になるとリーフ内のアマモ場に入り捕食行動をすることが知られており、環境省調査や環境影響評価書の中でもその行動が記されています。

 ジュゴンは環境省調査において1日に18km移動したことが示されており、また、環境影響評価においても、古宇利島から国頭村東海岸まで、数日のうちに行き来している様子が記録されています。環境省調査でも、南城市志喜屋のアマモ場で食み跡が見つかったり、読谷村の定置網に入った記録がありますから、豊見城市沖に現れても、決しておかしくはないのです。
 縄張りを持ち同じ海域に留まる個体がいる一方、広い範囲を回遊する個体もいるのです。
 (ジュゴンのはなしより。元は環境省ジュゴンと藻場の広域調査の資料)
沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


 なお、那覇市から豊見城、糸満市までの海岸には多くの埋立地があり、住宅地や商業地、工業地帯または人工ビーチやホテル等のレジャー施設として利用されています。また、現在は那覇空港第二滑走路の埋め立て工事がはじまっています。
 この海域にもジュゴンが食べるアマモ場がありますが、辺野古の埋め立て事業のように、「埋め立て反対」と熱くなる人は皆無です。マスコミも都市部の埋め立ては肯定的です。埋め立てれば当然のこと、その海は消失します。

この温度差は何なのでしょう?毎度疑問に感じます。

 私は基本的には埋め立て反対の立場でありますが、利用目的が決まっている那覇空港第二滑走路や、危険性除去という役割が決まっている辺野古についてはいたしかたないと考えています。航路土砂を利用する埋め立てこそ、減らすことのできる埋め立てだと思います。

 調べてる人が反基地運動のツールとして実態と違う形で伝え、それを偏った報道をもってマスコミが伝える。

 実際のところ埋め立てや環境問題についてたいして興味がない、埋立地をちゃっかり使っちゃってる人たちが、報道等を見て「ジュゴンがかわいそう。辺野古埋め立て反対」なんて主張します。ジュゴンがどういう生き物なのか調べた人なんてほとんど皆無でしょう。

 その流れが変わること、また、基地問題と絡めない、真に必要なジュゴン保護が行われ、地域における身近な環境活動について興味をもってくれる人が増えることを願い、この寄稿とさせていただきたいと思います。

 結論としておさえていただきたいのは、ジュゴンの主な生息地は古宇利島近海と嘉陽海岸であり、アマモ場は沖縄本島周辺各地に分布しており、辺野古のアマモ場は時折利用される場所である、と捉えていただければと思います。

 ジュゴンは辺野古にしか住めないとか、辺野古に多く住んでいるというのは根拠に乏しい見解(悪く言えばウソ捏造)であり、こうした主張を続けている以上、沖縄近海のジュゴンは絶滅を待つのみではないかと思いますし、環境問題として捉えるのであれば、他の埋立地にも関心を持ってほしいと思うのです。


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最後に、行事のお知らせです!

「沖縄県祖国復帰42周年記念大会」

テーマ 「世界をリードする誇りある沖縄県を目指して」

日 時  5月10日(土)14時~
場 所  宜野湾市民会館(宜野湾市役所となり)大ホール
参加費  500円


第一部 沖縄県祖国復帰42周年記念式典
第二部 記念講演 講師 池間哲郎先生(カメラマン、「日本はなぜアジアの国々から愛されるのか」著者)


沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


昨年の大会模様
沖縄のジュゴンを見た!沖縄のジュゴンの現状と問題点のまとめ


ご協賛窓口
※ご協賛は一口2000円から受け付けております。
□琉球銀行口座 店番号308 口座番号 512952 沖縄県祖国復帰記念大会実行委員会
□郵便振替口座 01700-9-72981 沖縄県祖国復帰記念大会実行委員会

協賛いただいた方は当日配布のパンレットにお名前、団体名、御社名が大きく印字されます。
また無料チケットを協賛金額に応じてお送りいたします。


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Posted by ウチナンチュは見た at 16:38│Comments(0)環境問題埋め立て安全保障sacomジュゴン
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プロフィール
ウチナンチュは見た
ウチナンチュは見た
執筆者             
☆「職業・教組」・・・
ウチナンチュのような顔をしたナイチャー姉さん。家庭を守る主婦として沖縄暮らしについて一家言ある。非常識なペンネームに対して割りと常識人。                                                      
     ☆「sacom」・・・
何百年も続く家系の由緒正しきウチナンチュ。命をかける釣りのことから、環境問題、安全保障問題について他の追随を許さない知識量を誇る。しかしあまりにもマニアックすぎて周囲からは変態扱いされている。                                        
☆「もう琉大生」・・・首里城近くに生まれ育った、ちゃきちゃきのウチナンチュ。
進学校に進み、地元ヒエラルキーの頂点と言われる琉球大学に進学するものの、物足りなさを感じていた。

                         ☆「伊良部島の次男」・・・ 
2年前に仕事の関係で、那覇市に引っ越してきた。「ナイチャー」「ナイチャー」と言われ悩んだことも。
ペンネームは伊良部島へ行った時に、何故か道行く人に「オマエは◯◯の次男か」と何度も何度も間違われたことから。

☆「某琉大生」・・・※「もう琉大生」君とは別←沖縄生まれ沖縄育ち。沖縄の中の欺瞞的な反基地論を徹底的に批判するが、それは地元沖縄への郷土愛があるからこそ。見てはいけないものをよく見る。